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No.2-2002/Feb |
最初に断わっておきますが、現在の私は平和を愛する一人のおっさんであります 日々、日本のハーレー界の為に、車検を通し続けている善良な都民であります 今からアップする事はもう10年以上前の若気の至りというヤツで 今現在の私は決してそんな生き物では無いという事を念頭において読んで頂ければ 幸いです 然しながらアツシは今でもあまり成長はしてないと思われます BLACK DOG アレは入道雲が我が物顔で水平線の上を席捲していたアツイ夏の日の事だった・・・ その日は日本の夏の風物詩ともいえる、花火大会が隅田川のほとりで催されていた 朝から茹だるような酷暑の中、その当時入ったばかりのメンバー2人が場所取りを していたのである 夕方になって次々と古参のメンバー達が合流し、無事、花火大会は終演した 無事と云っても10年以上も前に長髪で、手首まで刺青の入っている小僧など 今ほど多くは存在しなかった時代である為、まわりの人間にはカナリの不快感を 与えていた事は容易に想像できるであろう 唯、Needleに関して弁明させてもらえば、彼はこの当時から四季を通じて夏冬問わず 長袖だった為、不快感を余計に与えていたのは紛れも無く他のメンバー達である 彼らはどこでも半袖なのだ!自制心というモノを持ち合わせていないのである ある日Needleの仕事を手伝う為にアツシとアキラ2人が呼び出された事があった アキラとはもともとのドラムで、アツシに負けず劣らずのおバカである つい最近まで仙台の海は日本海だと思っていた程なのだ! で、こんな2人にNeedleが前日こんな事を云ったのである 明日ぁー通関キるのに、税関行くからゼッテー長袖で来いよ! 当日2人はヤッパリ半袖でやって来た どうしてなのかとNeedleが問い詰めると2人揃ってこう答えたのである あぁー、忘れてました! バァ〜カ! 死ね! つい昨日の事である、どうなってんだよ!キミ達のオツムは! Needleは落胆のイロを隠せない しかし彼らのCPUは、同時に3つの事柄までしか記憶出来ないのである 故に昨夜、 メシ 寝る 明日行く と記憶した時点で 長袖 というアイテムは 深層意識の奥底に消去されてしまっていた 結果、Needleの不安は的中した 立会いの検査官が彼らの姿形を見て、内点を支持したのである これで大幅に作業が遅れるのが確定したし、下手をすれば客のハーレーのタイヤまで 切り裂かれてしまうのである アタマを抱えているNeedleのすぐ傍ではおバカ2人が検査官と押し問答を繰り広げていた − 一部抜粋 − 検査官>お前ら!この中に拳銃とか入ってるんじゃないか? おバカ>入ってねぇヨ!バァ〜カ! 検査官>ホントかぁ! おバカ>ホントだよ!てめぇ! もし拳銃出てきたら、ソイツでてめぇを撃ってやる! ギャハハハァー 人の気も知らず、本当にお気楽、極楽なおバカ達である 話が随分と、逸れてしまったので一旦モトに戻させてもらおう とりあえず花火大会は、大きな問題も発生しないまま、無事、終演したのである 若干一名程、血だらけのカサマツという名の男を除けば 彼の話も長くなりそうなのでここでは割愛させて頂く事にする この後彼らは空腹を満たすべく違う場所へ移動を開始するのである 事件はこの移動先の路上で勃発する、ある駅前のアーケードの下で・・・ 花火大会による極度の興奮状態、多量のアルコール摂取 破壊の歯車はゆっくりと加速し始める・・・ 次回、急転直下の完結編! キーワードは黒い犬! |
黒い・・・黒い犬が・・・ソコ走り廻ってんスよぉ この事件直後から数日間に渡って、夜毎カサマツがうわ言のように繰り返し こう呟いていた事を今でも鮮明に記憶している・・・ BLACK DOG −第2章− 空腹を抱えたまま、彼らは豊島区のと或る繁華街に辿り着いていた ナニかを胃袋に放り込もうとアテもなく通りをブラついていた時 突如、後方からガラスの割れるような音が辺りに鳴り響いた! 振り返るとソコでは、アツシが某有名洋菓子店のショーケースを叩き割っていたのだった キャー! 通りすがりの浴衣を着たOLや、サラリーマン達が悲鳴をあげている・・・ この非日常的な光景を目の当たりにしたら、極めて当たり前の反応であろう しかし、ハァー!またか・・・ Needleの感想はこの程度である・・・ 当時はよく在る景色のひとつに過ぎなかったからであろう・・・ そう、日に何度も・・・ アツシがこのような行動をとった事に、たいした理由は存在しなかった 強いて云えば、たぶんこんなトコだろう 自分が歩きたいと欲した軌道の延長線上にショーケースが在る しかもカナリ歩道に張り出している 避ける事が面倒だ・・・ 邪魔だ・・・ なら、ブチ壊すまで・・・・! 愚直な程、回避するという言葉を知らない・・・邪魔なモノは総て薙ぎ倒す もちろん、モラルという観点からも、法律的にも認められる行為ではない、当然である! <社会不適合分子>・・・そう一言で片付けられてしまえば、それまでなのだが 通行の妨げになる程、歩道に迫り出して自己主張するショーケースを設置した 店側には何の非もないのであろうか? 疑問である・・・ 無論、アタマでは理解している・・・ 唯、カラダが納得出来ない・・・ いつからだろう・・・? 年齢を重ね、社会的立場を保有するようになってからは、直情的に行動する事が 皆無に等しくなった・・・これが、マルくなると云う事なのだろうか アノ憤りにも似た感情はドコから溢れ出していたのか? アノ頃は何故・・・? 総ては記憶の冥府な奥底に、今では埋葬されてしまっている 騒ぎを嗅ぎ付けてヤジ馬達が集まり出してきた ソロソロ警察官もご出勤の時間である ヤベェなぁ!バックレんべぇ〜か! そうNeedleが感じた刹那、 俺、今パクられるとヤバイんで先行きま〜す! そう云い残しアツシが走り去って行った そんな彼の後姿を見ながら心底、羨ましいとNeedleは思った・・・お気楽・・・ サテ、どうすんべーか? 走って逃げるのもカッタりぃーし・・・ そう思ったNeedleは、ワザと鈍重に歩を進め ギチギチと周りを威嚇しながらゆっくりとソノ場から立ち去ろうとしていた と、その時この騒ぎを一蹴するような怒声が辺りに轟く! コラァ!小僧!今逃げてったのお前らのツレだろう! 声に反応し、ゆっくりと振り返るとソコには二人組の男が立っていた 二人とも見るからにスジっぽい・・・ 一人は金の極太ネックレスに同じく極太のブレスレット! そして小脇にはヴィトンのセカンドバック! 当時の感覚から察すれば、当にドンピシャである! しかも、もう一人の男はピッチピチのゴルフスラックスに、キッチキチのパンチくん! 決定的だなっ! Needleはそう呟いた・・・ 次号Needleとの直接対決! やはり彼の辞書にも忍耐という言葉は存在しなかったのか? キーワードはやはり黒い犬! 固唾を飲んで続編を待て! |
BLACK DOG ― 最終章 ― ヤジ馬達でゴッタ返し騒然とする中、殊更己の力を誇示するかのように不敵なニタを 顔面一杯に拡散させていく二人組・・・ もちろん、その余裕の裏には、強力な後楯があってのことだろう 九割方・・・否、100%彼らを平伏させる事が出来ると確信した嘲笑・・・ うぜぇー・・・ 二人の様子を見ていたNeedleの率直な感想である しかも、アト数分もすれば警察官もこの場に駆け付けるであろう そうすれば、先程のショーケースの件でも詰問される・・・ 面倒クセェー 深い溜息を吐き出すと同時に アツシは上手く逃げ遂せたのだろうか・・・? そんな想いを巡らせながら、彼はアキラにこう告げた ハイハイ云って、適当にヤリ過ごせよ! なっ!? ナニ云われても我慢しろ! ハッ? マジすか!? アキラは驚嘆のイロを隠せない これだけのギャラリーの居る前で、イモを引くなんて・・・ ありえねぇ! 然しながら、よくよく考えてみれば叩かれてホコリのでないカラダではない 面倒な事になる前に、この場から消えて無くなることが必須課題である 納得できぬ後味の悪さを引き摺ったまま彼は渋々首を縦に振った おーコラ!小僧!逃げてったのお前らのツレだろうが! 一番近い距離にいたアキラのもとへ、極太ネックレスの男がニジり寄る! イヤッ、違いますよぉ フカシ入れてんじゃねぇー!知ってんだろぉ!? 知らないっスよ!マジでぇ! ナメてんじゃねぇぞぅ!ゴラァ! |
BLACK DOG − まさか、まさかの最終章 その2 − そんな遣り取りを数分続けた後、困惑のイロを浮かべた他のメンバー達が Needleに判断を委ねるように覆水な視線を送った・・・ どうしますぅ? ヤッちゃいますぅ? そんな想いが交錯する中、ソノ視線を独特の嗅覚で察知したもう1人のパンチ男が "視線のオトす先にいるのが、この小僧共のてっぺんなんだ" という事を直感する! 男は余裕たっぷりの緩慢な歩様と、嘲りを含んだニタを噛みながらNeedleに接近する 彼はゆっくりと距離を詰めてくる男を、黙って睨め付けている・・・ 彼の戦闘に於ける洞察力は踏んだ場数の豊富さからカナリの水準を誇る 敵を観察し、分析する力・・・ 敵を粉砕する為の手段・・・ ソレを瞬時に、そして反射的に判断する! 即ち、"思考の瞬発力" がズバ抜けているのである! クッキリと縦皺の刻み込まれた眉間、細められていく双眸・・・ 見る見る好戦的な表情へと変貌していく・・・ おま・・・・ ナンだっ ゴラァ!! Needleはその男に総てを云わせない! しかも先程、己のクチから吐き出した "我慢しろッ!!" という自戒の句は 銀河の果てまでフッ跳ばされ、彼の思考の中からきれいサッパリ抹消されていた 今時、ンな流行んねぇアタマしてんじゃねぇよ! ナニぃ!? 中坊だってしてねぇぞぉ! ゴラァ!! そう云い放つと同時に、イッキに間合いを詰めていく 渾身の一撃をコメカミに叩き込むために・・・ 一撃打倒!! 調子んノッてんなよぉ! てめぇ〜!! 確実に右拳をヒットさせる為に相手の髪の毛を鷲掴みにいく・・・ 左掌を握り絞った刹那、右拳で男のコメカミを薙ぎ払う!! 轟ッ・・・・!? しかし、渾身の一撃は緩いカーブを描きながら空を切る・・・ 的確に捉えたはずの側頭部がソコには無い・・・ 妙な違和感に戦慄を覚え、瞬時に身体を翻し距離をとる・・・ ナンダコノ違和感ハ・・・ そう彼が感じた刹那!! ☆▲※◇♂○・・・!? 彼の左掌が握り絞めていたモノは・・・ 彼の驚愕した表情を笑い飛ばすが如く、左掌にカラミつくパンチのヅラ!! 今ナニが起きたのかさえ理解出来ぬまま、絶叫と共にヅラを地面に叩き付ける!!! かれの既成概念がガラガラと轟音を立てて崩れ落ちていく・・・ まさかヅラなんて・・・ 反則だヨ・・・ ソコには静まり返った群集を嘲笑うように、嬉々としてクルクル廻るパンチのヅラがあった まるでその愛らしさは、悪戯に駆け廻る黒い小型犬のようである・・・ 暑い、暑い夏の夜・・・・・見上げる空に星は無い・・・ 完 |
BLACK DOG ― あとがき ― 人間が想像出来得る総ての事象は 総て起こり得る現実である・・・ 誰の言葉なのか今じゃもう記憶の奥底に埋没されてしまっていて思い出せません しかしこの時ほど、この言葉の意味が身に沁みた事はありませんでした お笑いのコントなんかでしかパンチのヅラなど見た事もなかったし まさかそんなモノが正規なルートで一般に流通しているなど夢にも思いませんでした しかもソレをチョイスする人間が世に存在するなど・・・ Nightmare ・・・ 世の中には自分の陳腐な想像など笑い跳ばすような現実が 秒単位で生まれているんですね、キット・・・・ 今、この瞬間にも・・・・ 自分もカナリ、そうゲロ吐きそうになる程、驚きましたが 一番驚いていたのは、極太ブレスの男! そう、パンチくんのツレの彼です! 毟り取られた頭部を両手で覆い隠すようにして跪くパンチくんを見下ろす彼の目は これでもかっ!というぐらいガッツリと見開かれていました 内緒だったんですね・・・ キット! そんな彼らを見て、やわらかな後悔に包まれました 掴みにいかず、蹴りクレてればよかったと・・・ しかも彼が自分で気に入ってチョイスしたそのヅラを 今時、中坊でもそんなアタマはしてないと罵ったこと・・・ 今ではその事がトラウマになること無く、元気に人間やってることを祈るだけです おぉ神よ! 罪深き私をお許し下さい! |